第30章

朝比奈澪ははっと我に返った。さっきまでベッド脇で服を脱いでいたはずの男が、いつの間にか目の前に立っている。

顔を上げた瞬間、漆黒の瞳とぶつかった。

底の見えない闇。古い淵のように深く、じわりと危険な匂いを孕んでいる。

盗み見を現行犯で押さえられたせいで、澪の頬がかっと熱くなる。視線を泳がせながら、

「だ、旦那さま……」

神宮寺玲央は伏し目がちに、澪の前で足を止めた。

整った顔立ち。澄んだ杏眼には薄い水膜がかかり、唇は赤く、怯えたみたいに少しだけ尖っている。

汚れのない瞳だった。混じり気のない宝石みたいに、透きとおっていて、そこに邪な影はひとつもない。

――だからこそ。

その...

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