第32章

朝比奈澪が首を傾けてそちらを見ると、神宮寺宗一郎が片手で顔を覆い、指の隙間からこちらを覗いていた。

顔じゅう、興奮でいっぱいだ。

視線が合うと、宗一郎はにこりと笑って言う。

「わしは何も見とらん。続けなさい、続けなさい」

そう言うや否や、ソファから立ち上がって、何事もなかったかのように部屋を出ていく。しかもわざとらしいほど大きな声で――。

「歳を取ると、身体を動かさんとな。庭でも散歩してくるか」

要するに、だ。

「老いぼれは邪魔せんから、お前らは好きにやれ」という意味である。

朝比奈澪は、その背中に向かって親指をぐっと立てた。

おじいちゃん、最高!

「ね、今ならおじいちゃ...

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