第38章

黒縁の眼鏡をかけた男が一人、ラフな私服姿でそこにいた。

レンズの奥の瞳は、獲物を品定めするみたいに朝比奈澪をねっとりと追っている。陰湿で、底の濁った目。

神宮寺玲央の、真正面から刺してくるような――怖いほどに真っ直ぐな視線とは違う。これは、露骨な悪意を孕んだ視線だった。

澪は一瞬だけ固まった。記憶を探っても、こんな男に会った覚えはない。

唇をきゅっと結び、踵を返して立ち去ろうとする。

その背中へ、嘲るような声が飛んできた。

「社長奥様。入って見ていかないんですか? ……怖くて入れない?」

澪が振り向くと、黒縁眼鏡の男が腕を組み、挑発するように口角を上げていた。

澪は少し考え、...

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