第39章

朝比奈澪はティッシュで手を拭くと、目の前のパソコンを開いた。

白く柔らかな指先がキーボードを叩く。目で追えないほどの速さに、思わず息を呑む。

ほどなくして、少し離れた場所のプロジェクターに監視映像が映し出された。

56階の廊下――その監視カメラの映像だ。

画面には、社長室前での白川玲奈と朝比奈澪のやり取りが、くっきりと記録されている。

そして決定的だった。

朝比奈澪は最初から最後まで、白川玲奈に一度も触れていない。

部署の全員が、反射的に呼吸を止めた。

「おつかい代は払うから」

その一言が流れた瞬間、誰かが堪えきれずに吹き出した。

おつかい代が出るかどうかなんて、誰が気に...

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