第42章

妻の視界に入る男は、自分ひとりでいい。

たとえ相手が兄さんだとしても――それは許せなかった。

朝比奈澪は唇をきゅっと結んで、こっそり笑う。つま先立ちになり、神宮寺玲央の口元へちゅ、と軽くキスを落とした。

そのまま耳元へ顔を寄せ、囁く。

「ねえ、旦那さま。やきもち妬いてる玲央、すっごく可愛い」

神宮寺玲央の端正な顔が、すっと陰る。

男に向かって「可愛い」だと?

反論しかけた、その瞬間。

「……私、そういうの、だいすき」

その一言で、玲央の瞳の奥がぐっと深く沈んだ。

周囲の視線など意に介さず、彼は澪の腰に腕を回し、ひょいと抱き上げる。迷いのない足取りで、階段へ向かった。

「...

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