第45章

彼女は胸の奥の動揺を押し殺し、視線をわずかに揺らした。悔しそうに下唇を噛みしめてから、涙声で言う。

「朝比奈さん、私……本当のことを言ってるんです。こういう式は、絶対に専門の人が書かなきゃいけない。ほんの少しでも間違えたら、実験は全部水の泡になります」

朝比奈澪は小首をかしげたまま、じっとこちらを見ている。言い訳ひとつしない。

その様子に、星野雪乃の胸がぱっと明るくなった。怯んだのだ、と勝手に思い込み、畳みかける。

「朝比奈さん、別にあなたを責めたいわけじゃありません。ただ……和也さんが可哀想で。あの人、ずっと頑張って、やっとこの式を書き上げたんです……」

言葉を切り、また唇を噛む...

ログインして続きを読む