第133章 人違いだ

黒崎蓮はゆっくりと顔を上げ、冷笑を浮かべた。

その声は平然としており、窮地にある狼狽など微塵もない。それどころか、絶対的な支配者としての響きを帯びていた。

「江利山敦。数年ムショ暮らしをして、少しはマシになったかと思えば……増えたのは無駄口だけか。地獄から這い戻った人間なら、もう少し賢くなっていると期待していたんだがな」

黒崎蓮の視線が、意味ありげに彼の中身のない右のズボンの裾を掠める。唇の端が、さらに冷たく吊り上がった。

「どうやら監獄生活は人を生まれ変わらせるどころか、愚か者の偏執を強めるだけらしい。これほどの大層な舞台を用意して、見せたかったのはその哀れで滑稽なざまか?」

彼...

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