第157章 私の興を削ぐな

佐伯七海の言葉を聞き、人を呑み込まんばかりだった黒崎蓮の怒りは、突きつけられた鋭利な現実を前にして、不気味なほどピタリと凍りついた。

周囲の野次馬たちも静まり返り、複雑な視線を交わし合う。

なるほど、元旦那の乱入というわけか。

単なる痴話喧嘩より、よほど面白い見世物だ。

バーのマネージャーは冷や汗を拭いながら、あちらこちらと顔色を窺い、板挟みになって地団駄を踏んでいる。

西園寺麗華は少し離れた場所から、その全てを冷ややかに観察していた。

天宮星羅のために理性を失う黒崎蓮を見て、その常に凪いでいた瞳に、ドロリとした本物の嫉妬が滲む。

長年彼の側に寄り添い、腫れ物に触るように機嫌を...

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