第158章 元夫さん、羞恥心はどこ?

一方、その頃。

黒崎蓮は天宮星羅を抱きかかえたまま、騒然とするバーの入り口を大股で抜け出した。

夜風が吹き抜ける。

そこには路上の屋台から漂う煙の匂いと、車の排気ガスの臭いが混じり合っていた。だが、その風も黒崎蓮が纏う酒気を払うことはできず、二人の間に張り詰めた一触即発の空気を散らすこともできない。

「黒崎蓮、降ろしてって言ってるでしょう!」

天宮星羅は彼の腕の中で激しく身をよじり、拳でその胸板を何度も叩いた。

しかし、男の胸は岩のように硬く、彼女を拘束する腕はびくともしない。逃げ出す隙など、微塵も与えてはくれなかった。

黒崎蓮は無言のまま、路肩に停めてあるマイバッハへと一直線...

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