第180章 「物理的冷却」

それからの二日間は、奇妙な静寂の中で過ぎ去っていった。

部屋に残された音は二つだけ。

一つは、天宮星羅が走らせる鉛筆が白紙の上を滑る、サラサラという衣擦れのような音。もう一つは、窓外で弱まりつつある嵐の余韻だ。

星羅は完全に仕事の世界へと没入していた。小さな木製テーブルを即席の設計台に見立て、すべての感情を指先に込めていく。

黒崎蓮の熱は下がったものの、脚の怪我のせいで思うように動けない。彼は大半の時間をベッドのヘッドボードに寄りかかるか、部屋に唯一ある椅子に腰掛け、沈んだ瞳でただじっと彼女を見つめて過ごしていた。

言葉は交わさず、邪魔もしない。

三日目の早朝。分厚い雲の切れ間か...

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