第253章 「もしも」はない

巨大なガラス窓から差し込む朝一番の陽光が、寒々しい病室を虚構の暖かな黄金色に染め上げている。

一条拓海は調子はずれの鼻歌を口ずさみながらドアを押し開け、テイクアウトした朝食の袋を手に病室へと足を踏み入れた。

息が詰まるほど重苦しい空気を少しでも和ませようと思っていたのだが、顔を上げた瞬間、彼の口元の笑みは完全に凍りついた。

病室内の光景は、あまりにも異様だった。

天宮星羅は病床の傍らに置かれたパイプ椅子に腰を下ろしていた。背筋をピンと張り詰め、無表情のまま、虚ろな瞳でただ前方を見つめている。

彼女の視線の先では、黒崎蓮が水を飲んでいた。

当の黒崎蓮といえば、無事な左手を使ってひど...

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