第272章 鮮血の終幕

死神との競争とも言える追走劇が、仮想と現実の二つの世界で同時に幕を開けていた。

指揮車両の中は、空気が重くまとわりつくような圧迫感に包まれていた。響き渡るのは、狂ったようにキーボードを叩く乾いた打鍵音だけだ。

佐伯七海の十指が盤面上を激しく踊る。モニターには無数のコードの滝が流れ落ち、複雑な追跡プログラムとクラッキングの構造図が明滅を繰り返していた。

「くそっ、駄目だ!」

彼女は低く毒づいた。額には細かな汗が滲み、その一滴が鼻先を伝ってキーボードへと落ちる。

「奴のサーバー構築は軍用レベルだわ。多重の踏み台に、ミラーリングの偽装まで仕掛けられてる」

「発信源は五秒ごとに世界中を飛...

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