第280章 5年遅れの謝罪

書斎には天宮昴だけが残されていた。

彼はデスクの奥に座り、目の前にはイーストサイドの廃劇場に関する詳細な構造図が広げられている。赤と青、二色のペンを使い分け、狙撃ポイントや撤退ルートの候補を書き込んでいた。

部屋のドアが控えめにノックされる。

「入れ」昴は顔も上げず、冷ややかな声で応じた。

ドアを押し開けて入ってきたのは、黒崎蓮だった。

昴のペン先が図面の上で一瞬止まったが、すぐに動きを再開し、彼の存在を完全に空気として扱った。

蓮は彼の向かいに立ったまま、口を開こうとしない。

書斎にはペン先が紙を擦る微かな音だけが残り、その音が静寂の中で無限に増幅され、息が詰まるほどの重圧を...

ログインして続きを読む