第38章

雪乃の口元に得意げな笑みが浮かんだが、それは一瞬で元の表情へと戻った。彼女はわざと手の甲で存在しない涙を拭い、いかにも可哀想な被害者を演じてみせる。

紬はまだ新しい企画書の再構築に追われていた。指先が微かに震えているのは、過労のせいか、それとも病のせいか自分でもわからない。

そこへ佐藤秘書から、五分後に会議を開くという通達が入った。目を細め、ブラインドの隙間から社長室を覗き込むと、蓮の隣に座る雪乃の姿が見える。――なるほど、そういうことか。

紬は自嘲気味に笑い、再び視線を落としてキーボードを叩き続けた。愛しい女のために怒り心頭で会議を開くとは、どうりで急なわけだ。

だが、こちらの企画...

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