チャプター 76

ヴァイオレット視点:

屋敷の外へ一歩出た瞬間、山の空気が私に叩きつけられた。華氏三十度――鋭く、容赦がない寒さだ。私は両腕で自分を抱きしめたが、薄いブライズメイドのドレスは風よけにもならない。肌はたちまち粟立ち、冷えが真っすぐ骨まで染み込んでくる。妊娠して体温調節が狂ってからというもの、こんなふうに寒さが身体の芯を直撃する感覚は初めてだった。

スマホが震えた。画面にシエナの名前が光る。「もしもし、いま――」

「ヴィ、ごめん、本当にごめん」酔いが回った、申し訳なさそうな声が届く。背後ではえずく音が途切れ途切れに混じっていた。「ルシアンが、あなたが倒れたって言ってて。で、私のこと、ちゃんと起...

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