チャプター 89

ヴァイオレット視点:

薪焼きの炉はじゅうじゅうと音を立て、フェリックスが手慣れた所作でローストラムにナイフを入れる。焦げた肉とローズマリーの濃厚な香りが空気を満たした。私は椅子にもたれ、友だちの笑い声のぬくもりに身を委ねる。ちゃんとこちらを気にかけてくれる人たちの輪の中にいる――その当たり前の幸福を、ゆっくり味わっていた。

「シエナって、いつもいい店見つけるよね」リリーがため息まじりに言い、ぱりぱりに焼けた皮をひとかけら口に放り込んだ。「このラム、最高」

「当然でしょ」シエナはわざと偉そうに言い、丸くせり出したお腹に庇うように片手を添えた。「妊娠中の食欲が私を食の探偵にしたの。しかもルシ...

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