第2章
大地は、彼女がかつて付き合っていた写真家との間にできた子供だと、彼女はあっさりと説明した。
その人は彼女が最も魅力的だと感じた元カレで、子供の父親も大地の存在を知っており、定期的に養育費を振り込んでいるという。
「去年、モデルと結婚したのよ」
彼女は肩をすくめた。
「面倒なことになるのは嫌だから、私から連絡を絶ったの」
私は心配そうに大地を見つめた。
すぐに、自分が宮崎家の「完璧な家庭」への執着に影響されていることに気づく。父親がいない環境で育つことが、この子に影響するのではないかと心配している自分がいたのだ。
栗原優智は私の考えを見透かしたように、そっと手招きした。大地はすぐにおもちゃを置いて、こちらへ駆け寄ってくる。
「この子は明るい性格で、そういうことはあまり気にしないの。私に似て自由人だから」
栗原優智は息子の髪をくしゃくしゃにしながら言った。
大地は不意に私の足に抱きついた。
「杏乃おばさん、すごくきれい! またいつでも遊びに来てくれる?」
その人懐っこい仕草に、私の心臓がどきりと跳ねた。思わず光一のことを思い出してしまう。いつも冷めた顔をしたあの『若様』は、決してこんなふうに私に懐いたりはしない。それどころか、いつも私に悪戯を仕掛けてくる。この間など、私が入浴中にわざと外から浴室の鍵をかけ、梅之助が帰宅するまでの二時間も閉じ込められたのだ。
大地の無邪気さと比べると、光一の瞳にはいつも年不相応の打算が透けて見える。
それが私を悲しくさせた。彼には完璧な家庭があり、母も父もいるのに、その成長は決して順風満帆とは言えない。
私はしゃがみ込み、大地の頬をそっとつねった。
「あなたが生まれる前から、私はもうあなたの杏乃おばさんだったのよ」
大地は嬉しそうに笑い、手を伸ばして私の首に抱きつき、頬にキスをした。その単純な仕草に、胸の奥から温かいものが込み上げてくる。
光一よりずっと可愛い。私は心の中で密かに比較した。あの子はこんなふうに懐いてくれたことなど一度もない。幼い頃でさえ、どこか距離を置いていた。
「誰かさんは、私たちの間の約束も友情もすっかり忘れちゃったのかと思ってたわ」
栗原優智が皮肉っぽく言った。
あなたはずっと、私の人生で一番大切な友達だよ。その言葉が心の中で叫びとなって響くが、口に出すことはできなかった。
結婚後、梅之助の束縛はますます厳しくなった。彼は支配欲が強く、私が友人と付き合うことを許さない。親しい友人であるほど遠ざける必要があり、表面的な平和を保つために、私は次第にすべての友人から距離を置いていった。
何か言い訳をしようと口を開きかけたその時、特別に設定した着信音が鳴り響いた。
私は無意識に身をこわばらせる。画面に表示された発信者名が、私を一瞬で冷静にさせた。宮崎梅之助。
電話に出るとすぐに、宮崎梅之助の気だるげな声が不機嫌さをまとって聞こえてきた。
「どこにいる?」
栗原優智はすぐに息子に合図して、アニメの音量を下げさせた。母子二人は同時に耳をそばだて、全く同じ姿勢で興味津々に私を見つめている。
首をかしげ、瞬きもせずにこちらを見つめる様は、まるで餌付けを待つ二匹の小動物のようだ。そのそっくりな姿に、私は思わず口元を綻ばせ、心に一筋の温もりを感じた。
私はすぐには梅之助の問いに答えなかった。
電話の向こうの彼は私の沈黙に気づいたのか、少し口調を和らげた。
「光一が眠れないんだ。君に寝る前の物語を読んでほしいそうだ。杏乃、子供相手に意地を張るな」
子供相手に意地を張るな。それは梅之助が最もよく口にする言葉の一つだった。
光一が私に無礼を働いたり、悪戯をしたりするたびに、梅之助はいつもそう言う。まるで私のほうが物分かりの悪い子供であるかのように。
私は心の中でため息をついた。
梅之助は、光一が私を尊重しないことを決して正視しない。ただ息子が自分を模倣し、崇拝しているからというだけで。梅之助にしてみれば、息子の行動はすべてが可愛らしく、むしろ奨励すべきものなのだ。私を二時間も浴室に閉じ込めるような悪戯でさえ、梅之助の目には単なる「子供っぽさ」の表れとしか映らない。
「あなたはいつ帰ってくるの?」
私は静かに尋ねた。
電話の向こうから梅之助の忍び笑いが聞こえてくる。その、勝者の余裕に満ちた得意げな笑い声を、私は嫌というほど知っていた。
私の思考は、七、八日前のあの口論へと飛ぶ。梅之助が出張に行く前、彼の女性秘書が私に一枚の写真を送ってきたのだ。写真には、その若く美しい秘書が梅之助の胸に飛び込み、片手で彼のネクタイを掴んでいる姿が写っていた。その表情は不快なほどに親密だった。
その時、私は病院から帰ってきたばかりで、母の病状が悪化したことを知り、気分はどん底まで落ち込んでいた。
その写真を見て、私の感情は完全に爆発した。
「会社の廊下でうっかり転んだだけじゃないか。何を大騒ぎしてるんだ」
梅之助はそう説明した。
「どうして他人にネクタイを掴ませるの?」
私は問い詰めた。
「どうして彼女が転んだのに、すぐに突き放さなかったの?」
梅之助は数言の気休めが効かないと見るや、冷たい顔で家を出て行った。
翌日、私はその女性秘書からの電話で、梅之助が直接大阪へ出張に行ったことを知った。
その時から、私たちのこの冷戦は始まったのだ。
七、八日間、梅之助はずっと私が自分から連絡してくるのを、私が非を認めるのを待っていた。しかし私は母の病状のことで手一杯で、彼に連絡する暇など全くなかった。
「自分が悪かったと分かったか?」
梅之助は電話口で、尋問するような口調で尋ねた。
私は答えなかった。
彼は今でも私が悪いと思っている。父親が母親を尊重しないのに、父親を崇拝する子供が母親を尊重するはずがない。
長い沈黙に、梅之助は何かおかしいと察したのか、探るように呼び方を変えた。
「杏乃ちゃん?」
その親しげな呼び方は、かつては私の心をときめかせたが、今となっては耳障りなだけだ。
私は先ほどの梅之助の忍び笑いを真似てから、平坦に言った。
「宮崎さん、早く帰ってきてください。離婚しましょう」
そう言って、私は電話を切った。
栗原優智と大地は、依然として聞き耳を立てるあの姿勢のまま、さらに目を大きく見開いている。大地が小声で尋ねた。
「ママ、杏乃おばさんが言った『離婚』って、どういう意味?」
栗原優智はそっと息子の頭を撫でた。
「杏乃おばさんが、ママみたいに自由になるってことよ」
私は携帯電話を置くと、ずっと胸の上にあった巨大な石がようやく取り除かれたような気がした。この決断は、もうずっと前から心の中で温めていたが、ただ口に出す勇気がなかっただけだ。今日、母を失ったのと同じ日に、私はついに自分の声を取り戻した。
「杏乃」
栗原優智は真剣な眼差しで私を見た。
「本気なの?」
私は頷いた。いつになく、固い決意を込めて。
「それじゃあ、おかえりなさい、私の友達」
栗原優智は両腕を広げ、私を抱きしめてくれた。
