第3章
自宅は埃だらけで人が住める状態ではなかったため、私は栗原家に身を寄せ、母子と同じベッドで眠ることになった。
大地は壁際に寝かされたが、私と優智の間に割り込もうと小声で騒ぎ立てた。
「真ん中で寝る!」
「だめよ、杏乃おばちゃんをベッドから蹴り落としちゃうでしょ」
優智はそっと息子の頭を撫でた。
「今夜は大人しくそっちで寝なさい」
大地は唇を尖らせたが、それでも素直に布団の中へ潜り込んだ。
ものの数分も経たないうちに、彼はすうすうと寝息を立て始めた。まるで小さなハムスターのように、安らかだ。
私はベッドの反対側に横たわり、天井に残る照明の淡い跡を見つめていたが、どうしても眠れなかった。
母の死、光一の冷たい拒絶、梅之助に離婚を切り出したこと——この一日で起きた出来事はあまりにも多すぎた。夜が更けてようやく、そのすべてをじっくりと振り返る時間ができた。悲しみが潮のように押し寄せ、私を音のない闇の中へと沈めていく。目は乾いているのに、涙は一滴も流れなかった。
「眠れない?」
優智の声がそっと届いた。
私は答えず、ただ静かに首を横に振った。暗闇では見えないだろうと、そのあとで気づいたが。しかし優智は私の沈黙を理解してくれたようだった。彼女はそっと私の肩に腕を回し、何年も前、数え切れないほどの夜を共に過ごしたときのように、優しく背中を叩いて慰めてくれた。
「お母さんが……」
声が詰まり、言葉が続かなかった。
母の死は、私の人生における最後の防衛線を引き裂き、十年もの間私を閉じ込めていた檻と、ようやく向き合わせるきっかけとなった。
優智は私を急かすことなく、ただ静かに背中を叩きながら、低い声で言った。
「杏乃ちゃん、私はここにいるよ」
どんな困難に直面しても、優智はいつもそう言ってくれた。
十年が経ち、再びこの言葉を聞いたとき、涙の堤がついに決壊した。私はまるで東京湾を当てもなく漂う漁船のようだった。母という暖かい港を離れたものの、友情という灯台の光の下で、束の間の休息を見つけたのだ。
数日後、私は母の葬儀の手配を始めた。
初めてのことなので、どのようなしきたりがあるのかよく分からなかったが、幸いにも優智と大地がずっとそばにいてくれたおかげで、どうにかこうにか滞りなく済ませることができた。母の骨壷が仮設の祭壇の前に安置され、私は気力を振り絞り、一つ一つ儀式をこなしていった。
「杏乃、少し休んだ方がいい」
優智が白湯の入ったカップを差し出しながら、気遣わしげに言った。
私は首を横に振り、母の遺品の整理を続けた。
これが、私が母にしてあげられる最後のことだったから。
不意に、玄関のチャイムが鳴った。
疲れた体を引きずって玄関へ向かい、ドアを開けると、一束の白い胡蝶蘭が目に飛び込んできた。宮崎梅之助がそこに立っていた。高価そうな深灰色のスーツを身にまとい、髪はきちんと整えられている。その顔には、私があまりにもよく知る、すべてが意のままであるかのような余裕の笑みが浮かんでいた。
光一がその隣に、私立校の制服姿で立っている。その表情は気だるそうで、苛立っているようにも見えた。
「杏乃、迎えに来たよ」
梅之助の声は優しく、そして力強かった。何年も前に、彼が私にプロポーズしたときのように。
かつてはこんな光景に胸を高鳴らせ、彼に折れていただろう。しかし今、私が感じたのは疲労だけだった。
「離婚届はもう用意してあるわ。私たちの寝室の引き出しに入れておいた。あなたが問題ないなら、離婚の手続きをしに行きましょう」
私は平然と彼に告げた。
梅之助の顔から笑みが消えた。彼はしばし黙り込み、光一を前に押し出した。
「光一、ママに言うことがあるだろう」
光一は視線を彷徨わせ、私を見ようとしない。彼は事務的に言った。
「ごめんなさい」
声はほとんど聞こえず、明らかに無理やり言わされている態度だった。
「これでいいだろう?」
梅之助が問いかける。その口調にはわずかな苛立ちが滲んでおり、このような謝罪がさも大きな恵みであるかのように聞こえた。
彼らの不承不承な態度を見て、私はふと可笑しくなった。
なるほど、過去の私は彼らの目には、こんなにも簡単に機嫌を取り戻せる存在だったのか。一束の花と、口先だけの謝罪。それだけで私がすべてを水に流し、あの尊重されることのない家に戻るとでも期待したのだろうか。
私は梅之助の目をまっすぐに見つめ、一言も発さずに、ゆっくりとドアを閉めた。
梅之助は何が起きたのか理解できていないようだった。
しばらくして、私の携帯電話が激しく鳴り響いた。
電話に出ると、梅之助の怒りに満ちた声が聞こえた。
「杏乃、どうしてもそんなことをするのか?」
どうしてもそんなことをするのか? 私は心の中でその言葉を繰り返し、そしてはっと悟った。
彼はやはり、私が理不尽なことをしていると思い、私が過ちを改めないと思っているのだ。
私は冷笑した。
「来なければよかったのよ、梅之助。今の私、あなたたち親子を見ると……吐き気がするの」
電話の向こうから、荒い息遣いが聞こえてきた。梅之助の驚愕に満ちた表情が目に浮かぶようだ。
私が梅之助にこれほど決定的な言葉を投げつけたのは初めてだった。十年の結婚生活で、これほどあからさまに嫌悪を口にしたことは一度もなかった。
彼の目には、私は世界で最も彼を愛し、決して彼のもとを去らない人間として映っていたはずだ。
私が彼を嫌うなど、どうしてあり得ようか。
彼は何かを言おうとしたようだったが、結局、ただ電話を切った。
これ以上、彼が受け入れられない言葉を聞くのが怖かったのだろう。
私は携帯電話をそばに放り投げ、深く息を吸い込むと、ソファに身を沈めた。
梅之助と私は、もともと何一つ接点のない、二つの世界の人間だった。
彼は財閥の家に生まれ、幼い頃から何不自由なく暮らし、一族の年長者たちに溺愛されて育った。その溺愛は彼を傲慢でわがままにし、私の犠牲や尽力を含め、すべてを当然のことと見なすようにさせた。
しかし、梅之助の子供時代は光に満ちたものばかりではなかった。
十歳の時、彼は誘拐犯に攫われ、その事件は彼の人生における最大の影となった。最終的に救出されたものの、彼の精神はほとんど崩壊し、性格も天地がひっくり返ったように変わってしまった。活発で明るかった子供は陰鬱で孤立し、誰に対しても警戒心を抱くようになった。
彼の両親は企業の仕事に忙殺され、彼の心の傷を顧みる暇もなかった。ただ一族の年長者、あの車椅子に乗った老人だけが、深い罪悪感を抱いて彼のそばに寄り添っていた。
一方、私は十七歳の時に交通事故に遭い、病院に運ばれた時、母は高額な医療費を払えないことに絶望していた。
まさにその時、宮崎家の年長者が現れたのだ。
私は今でもあの車椅子の老人を覚えている。疲れ切った顔をしていたが、その眼差しは鋭かった。
彼は私の身元を調べ上げ、そして一つの取引を持ちかけてきた。私の命を救う、その見返りとして、梅之助が心の影から抜け出すのを手伝ってほしい、と。
「梅之助は若く眉目秀麗で、知能も高い。だが性格は陰鬱で孤立し、社会に溶け込むことができん」
老人は低く、威厳のある声で言った。
「わしの命もそう長くはない。わしが逝く前に、あの子が影から抜け出すのを見届けたいのだ」
その頃の私は、名門大学に合格したばかりで、大学在学中にアルバイトに励み、卒業後は母の生活を楽にしてあげようと計画していた。
しかし、交通事故が私の人生の軌道を変え、私の計画は泡と消えた。もしこの取引を受け入れなければ、私と母の生活はさらに苦しくなる。
母はもう十分に疲れていた。これ以上、母に負担をかけるわけにはいかなかった。
その後、私は宮崎家に迎え入れられ、全身全霊で梅之助と向き合い、彼を温め、癒やすことに専念した。
当初、彼は私に対して強い警戒心を抱いていたが、時が経つにつれて、次第に私の存在を受け入れていった。こうして私の運命は梅之助と結びつき、次第に彼らが求める良妻賢母となっていった。
老人は私が妊娠した年に安らかに息を引き取った。亡くなる間際、彼は私の手を固く握り、お前は良い子だ、これで安心できる、と言った。
だが彼は、命の恩を、私がどの程度まで返せば、返し終わったことになるのかを、教えてはくれなかった。
