第4章

宮崎梅之助は、私が本当に彼の元を去るなど、考えたこともなかっただろう。

十年も一緒にいたというのに、彼は深夜にふと目を覚まし、腕で私の腰を強く抱き締め、首筋に顔を埋めては、不安そうな子供のように低い声で尋ねてくるのだ。

「杏乃、俺を愛してるか? ずっとそばにいてくれるか?」

私はいつも疲れ果てた声で答える。

「愛してるわ、多分。ずっとあなたのそばにいるわよ、梅之助」

そんな会話が、結婚してからの日々で数え切れないほど繰り返され、私の返事も次第に、プログラムされたかのように機械的なものになっていった。

梅之助の不安感が消えることはなかった。彼は私の携帯を覗き見し、スケジュール帳をチェックし、果ては私の安全のためだと嘯いて、運転手による送迎まで手配した。この数年間、私の一挙手一投足はすべて彼の管理下にあり、自由が何であるかすら、ほとんど忘れかけていた。

私が二十歳になったその日、梅之助は待ちきれないといった様子で私を連れて婚姻届を提出した。

十七歳で彼と出会ったとき、私はまだ恋愛経験のないただの高校生だった。宮崎家に助けられた後、大学へ進学する機会を諦め、恩返しのために宮崎家に残ることを選んだ。その頃の梅之助は二十二歳になったばかりで、びしっと決めたスーツ姿に私はいつも心を奪われた。恋する愚かな少女が皆そうであるように、彼の外見に惹かれ、心臓が高鳴り、頬が熱くなったのを覚えている。

光一を身ごもってから、梅之助の精神状態は著しく改善した。彼は積極的に会社の仕事に関わるようになり、一日中家に閉じこもることもなくなった。その時期、私たちの生活はようやく均衡を取り戻したように思えた。ある日、梅之助が、両親が彼に隠れて弟をもうけていたことを知るまでは。

その日、梅之助は雷が落ちたように激怒し、家中の花瓶や装飾品を叩き割った。

彼は両親に、なぜ隠していたのか、弟に会社を継がせるつもりなのかと問い詰めた。そして両親の沈黙が、彼の怒りと不安をさらに増幅させた。

その日から、彼はより冷酷に、そして仕事に没頭するようになった。自らの価値を証明せんと誓い、持ち前の優れたビジネスセンスと端麗な容姿で、瞬く間にIT企業界で頭角を現した。彼はもはや外部を恐れることなく、むしろ複合商業施設の社交活動に溶け込み、様々な晩餐会やパーティーに頻繁に出席するようになった。次第に私の存在を軽視し始めたが、それでいて、私がいつでも彼の帰りを待っているよう常に要求した。

「杏乃、知ってるか? 俺はお前が俺のせいで感情を揺さぶられる様を見るのが好きなんだ」

彼はそう言って、病的なまでの満足感を浮かべた。

「そうすると、お前が本当に俺を気にかけてくれていると確信できる」

そして私は、彼の感情的な欲求を満たすための道具に過ぎなかった。道具の感情など、誰も気にはしない。

十年が過ぎ、私の目尻には細い皺が刻まれ、眼差しは虚ろで疲れきっていた。一方の梅之助はますます円熟した美しさを増し、オーダーメイドのスーツがその気高い気質を一層引き立てていた。

私はもう、出会ったばかりの頃の梅之助がどんな顔をしていたか、思い出せなくなっていた。

彼は私に約束をすることを覚え、そしてその約束を餌に、私を繋ぎ止め続けた。

「杏乃、会社のことが片付いたら、軽井沢に別荘を買って、二人だけの結婚式を挙げよう」

今に至るまで、私たちは結婚式を挙げていない。私たちの婚姻届は書斎の引き出しの奥底に押し込まれ、まるで彼に隠された私のように、次第に誰からも気にされなくなっていった。

もし母が生きていたら、私はまだこの生活を続けていたかもしれない。

彼が私に愛を求めるなら、私はそれを与えただろう。

だが今、母の死が、私の最後の不憫に思う気持ちを断ち切った。

十年間尽くし、彼のために子供まで産んだ。どれほど大きな恩であろうと、もう十分に返したはずだ。

もう「宮崎夫人」でいたくない。もう「光一の母」でいたくない。

私はただ、緒方杏乃になりたい。

——

墓園では、風が石碑の間をそっと吹き抜け、初夏の暖かさを運んできた。

ここは私が母のために選んだ墓地で、小高い丘の上にあり、見晴らしがよく、遠くに富士山の輪郭が見える。母は生前、富士山を見に行きたいといつも言っていたが、仕事や私の世話のために、一度も叶わなかった。これからは、毎日それを見ることができる。

私は静かにそこに立ち、作業員が骨壺を慎重に墓穴へ納めるのを見ていた。

「本当にいい場所だね」

栗原優智が私の隣に立ち、柔らかな声で言った。

「おばさんもきっと気に入るよ」

私は頷いたが、喉が詰まる。隣の二つの区画を指差して言った。

「三つ買ったの。ここは私ので、もう一つはあなたの」

優智は一瞬きょとんとして、すぐに吹き出した。

「一生の親友でいようってこと? 死んでからも幽霊友達になれるわね」

彼女の冗談に、張り詰めていた気持ちが少し和らいだ。

「杏乃おばちゃん、じゃあ僕は?」

大地が私の手を引き、小さな顔を上げて尋ねた。

「僕も一つ欲しいな。そうすればずっと一緒にいられるよ」

優智はそっと首を振った。

「大地、大きくなってから自分で選びなさい。ママはあなたに、私たちよりずっと長生きしてほしいの」

告別式が終わり、私たちはゆっくりと墓園の出口へ向かった。

優智は私の手を強く握った。

「もし一人で寂しいと思ったら、大地を自分の息子だと思ってもいいのよ」

それを聞いた大地が、不意に私の手を引き、その澄んだ大きな瞳を瞬かせた。

「杏乃ママ、アイスクリーム買ってくれない? そうしたら悲しくなくなるから」

「大地!」

優智が眉をひそめ、その耳を抓もうと手を伸ばす。

「午前中にコンビニでアイス食べたでしょ」

大地は唇を尖らせ、可哀想そうな瞳で私を見つめる。

「杏乃ママ、だめ?」

私が屈んで、彼の願いを聞き入れようとしたその時、鋭い声が横から飛んできた。

「それは僕のママだ! そんな風に呼ぶな!」

はっと顔を上げると、数歩先に光一が立っていた。その顔には怒りと悔しさが入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。私が反応する間もなく、彼は駆け寄ってきて、大地を力任せに突き倒した。

大地は地面に倒れ、ざらついた地面で手のひらを擦って血が滲んだ。彼は驚いて自分の手を見つめ、それからわっと泣き出した。

私はすぐさま大地を抱き上げ、怪我の具合を確かめる。手のひらに擦り傷ができていたが、幸い大したことはなさそうだ。

「僕があなたの息子だ!」

光一はそこに立ち、拳を握り締め、私を睨みつけていた。

「どうして僕じゃなくてそいつを抱くんだよ!」

私は光一を冷ややかに見つめた。

「あなたみたいな意地の悪い息子を持った覚えはないわ」

光一の表情が固まり、次いでさらに怒りに染まった。

「早く帰らないと、パパが他の女の人を家に連れてきちゃうよ!」

その言葉で、ここ数日届いていた挑発的なメッセージを思い出した。

私の携帯にはいつも様々な写真が送られてくる。宮崎梅之助と女性秘書のもの、取引先の女性とのもの。彼はいつもそうやって、私がまだ彼を愛しているか、気にしているかを試すのが好きだった。

今度はその息子が、同じ手口で私を刺激しようとしている。

私はふっと解放されたような気分になり、心の中にあった最後の罪悪感も霧散した。

「ちょうどよかったわ」

私は平然と言った。

「あなたはそのまま、ママを乗り換えればいい」

光一の顔色がさっと青ざめた。唇が震え、涙が堪えきれずに溢れ出す。次の瞬間、彼は勢いよく飛びかかってきて、私の足に固くしがみついた。

「他の奴のママになるな! 許さない!」

腕の中の大地が小声で言った。

「杏乃ママ、このお兄ちゃん嫌い。泣き顔がすごく変」

私は小声で応じる。

「うん、あなたのお兄ちゃんじゃないから、気にしなくていいのよ」

宮崎家の運転手がこちらへ歩み寄り、ためらいがちに光一を立たせようとする。

光一は私を見上げ、その瞳には傷心と不可解な色が満ちていた。まるで、私が去ったことが冗談ではないと、初めて本気で悟ったかのようだった。

私はもう何も言わず、大地を抱き、優智と共に墓園を後にした。

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