第5章

警察署の椅子はコンクリートのように冷たく硬く、古びたコーヒーと消毒液の匂いが鼻をついた。私と孝介くんは別々の部屋で事情聴取を受けたが、薄い壁の向こうから、彼の落ち着いた声が微かに聞こえてきた。

「何があったのか、正確に把握する必要があります」刑事の声は、感情を排した事務的な響きだった。「あなたがたが拉致された時点から、順を追って話してください」

私はすべてを話した。橘の屋敷、押し入ってきた男、脅迫、そして銃。私たちはただ、必死に身を守っただけなのだと、何度も強調した。

「コンビニの防犯カメラ映像が、君の話を裏付けている」やがて刑事が言った。「これは、まぎれもない正当防衛だ。もう帰っ...

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