第11章 嵐の中の対決

深夜十時。リビングのソファに深く身を沈めた夏川圭一は、バラエティ番組が映し出す虚ろな光を浴びながら、全神経を研ぎ澄ませていた。テレビを見ているふりをしながら、彼が待っているのはただ一つ――反撃の狼煙を告げる、田中からの合図だ。

その瞬間は、唐突に訪れた。テレビの裏に仕掛けられた対抗装置から、電子的なブザー音が微かに響く。心臓が跳ねるのを抑え、圭一はリモコンを操作するふりをしながら、装置の周波数を合わせた。

『夏川! 緊急事態だ。L国の貨物船が予定より一日早く出航した』

ノイズ混じりのイヤホンから、田中警部補の押し殺した声が飛び込んでくる。

「何? 取引は今夜だと?」圭一は誰...

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