第5章
エララ視点
目を開けた瞬間、手が勝手に腹へ伸びた。
平らだ。空っぽだ。
「……子ども……」起き上がろうとして、身体が恐ろしいほど言うことを利かない。
「動くな」
低い声に、はっと首を振り向ける。寝台の脇に座っていたのは、五十を超えた頃の男――銀白の長髪を後ろで束ね、底知れぬ眼差しをこちらへ向けている。その目は、私のものと同じ形をしていた。
アルドリック・ムーンウィスパー。影の森で最も強大なエルフの領主。
――父。
「……父上?」掠れた声しか出ない。
彼はゆっくり頷き、手を伸ばして私の額に触れた。
「エララ。もう大丈夫だ」
周囲を見回す。アッシュウィング王宮...
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