第22章 夜明けの後で

小沢かなは歩み寄り、そっとノアの袖口をつまんだ。

「行こう。スカート、汚れちゃった」

ノアは小さくうなずき、彼女に合わせて立ち上がる。

湖畔を離れても、背後の聴衆はまだ歌の余韻から抜け出せないでいた。ノアはさっきの旋律を低く口ずさみ、小さな林を抜ける途中で襟元を指先で引いた。

「こんなに早く戻りたくない。もう少し歩かない?」小沢かなが訊く。

ノアは短く応じた。

林の奥に、石造りの東屋がある。遠くの夜会はまだ明るいのに、ここには人影がない。小沢かなはノアを座らせ、その体温がいつもと違うことに気づく。午後に交換したものが、効き始めている。

けれどノア本人は、戸惑っていた。

「……...

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