第33章

ノアを前にすると、小沢かなは警戒心を百倍に引き上げずにはいられなかった——。

ニール王子みたいに、そう簡単に丸め込める相手じゃない。

レインはセシリーを守りたい。だからニール王子が耳にするのは、彼がわざと高く掲げた、最後の一言だけでいい。

けれどノアは?

風が彼の耳で、光が彼の目だ。

どこまで聞かれた?

どこまで感じ取られた?

読心術は一瞬の思考しか拾えない、とはいえ——。

小沢かなの胸の内は、鉗鍋を火にかけたみたいにぐつぐつと湯気を噴き上げていた。心臓を吊り上げたまま、最後の一足が落ちるのを待つ。

「エステル?」

ノアはいつの間にか目の前に立っていた。何も問い詰めず、た...

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