第50章

小沢かなは胸が張り裂けそうな顔のまま、大広間を出ていった。

聖歌隊の旋律が扉の外まで流れ、黄金の甲冑をまとった衛兵たちが長剣に手を添え、警戒の目で彼女を見据える。

「グラントさん、勝手に立ち入られては困ります」

涙の跡が頬に残り、つい先ほどまで深い悲しみに沈んでいたのが一目でわかる。

「いえ……ただ、少しこの辺りを歩くだけ」

騎士たちは顔を見合わせた。昨夜の一件は、すでに耳に入っているのだろう。

彼らは気の毒そうに目を細める。

「……ああ、もちろん。どうぞ」

小沢かなはスカートの裾をつまみ、別の通路へと足を向けた。

いつもなら人の往来が絶えない回廊は、今はがらんとしている。...

ログインして続きを読む