第63章

 彼がひらりと手を振ると、小羊は白い光の粒へとほどけ、やがて天地のあいだに溶けて消えた。さっきまでまとわりついていた玄妙な感覚も、すうっと引いていく。

 そこに残ったのは、温和な顔立ちの少年がひとり。彼は彼女を見つめて言った。

「エステル、いたずらはほどほどに」

「あなた……止めたの?」

 小沢かなはぱちりと瞬きをする。

「当たり前だろ」少年は当然のことのように言い放つ。「君に抱きかかえられて連れて帰られるなんて、御免だからな」

 まるで彼女の企みを見透かしたような目。

 小沢かな「……」

「けち」彼女は唇を尖らせた。「羊になったって、別にどうってこと――」

 言いかけて、...

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