第64章

字はひどく雑に書かれていて、ぷっくりした汁がまだ一滴、垂れ落ちた跡まで残っていた。小沢かなは頭の奥がまたずきずきと膨らむように痛み、視線を引っ込める。けれど神恩者たちは平然としていた。口をぽかんと開け、うっとりと見入っている。

 かなは反射的にセシリーの席へ目をやった。――いない。

「この字……」

「&%¥」

 ノアが言った。

 その声は、優雅で、どこか神のそれに似ていた。まるで厳かな教会の鐘の音のように、すべての者の耳底を打ち、胸の奥底へと響き渡った。

 フローヴァ教授が驚いた顔でノアを見た。何か言いかけた、その瞬間――

 どんっ。

 足元が乱暴に揺れた。教授は講壇に手をつ...

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