第72章

ニール王子はサリーナ公主に腕を取られて話し込んでいる。レインは隊列のずっと後ろ、遠巻きに歩いていた。今この瞬間セシリーが足を滑らせたら、誰も間に合わない。

ほんの少しでも手間取れば、か弱い灰かぶり姫は落ちた瞬間に闇の生き物に食い尽くされるだろう。

彼女は遠くから見ていればいい。何もしなくていい——。

殺した責任すら負わずに、あの目障りな、いつも小鹿みたいな目でノアを見つめる「物語の主役」は消える。

誰も彼女を責めない。

むしろ泣いてみせればいい。自分も苦しいのだと訴えれば、同情だっていくらでも集まる。

「エステル?」

セシリーがしゃがみ込んだ。

「エステル?」

セシリーの手...

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