第77章

無傷の左手に、親指ほどの小瓶が増えていた。中には、とろりと粘つく紫がかった赤の液体。見覚えがある――レインの血……?

「エステル?」

小沢かなは表情ひとつ変えず、瓶を懐へ滑り込ませた。

ノアの背後では、神恩者たちも三々五々戻ってきている。彼らは次々と彼女に声をかけたが、小沢かなは血の気の失せた顔のまま、近寄りがたい冷たさを纏っていた。

「悪いけど、できれば……あそこに座りたいの」

近くの岩を指す。焚き火の輪から少し離れているが、顔を上げればこちらからも見える距離だ。

「も、もちろん!」少年が立ち上がり、親切にも新しい火をもう一つ起こしてくれた。「グラントさん、必要なものがあったら...

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