第88章

長いこと走り回ったわりに、得られた情報はほとんどなかった。意識がふわりと沈みかけた、その瞬間。

はっと目が覚める。

額に手が置かれ、汗で額に張りついた髪をそっと払われた。

「グラントさん、熱がある」

「わたし……熱?」

小沢かなは、舌が回らないまま訊き返した。

「おそらく傷が原因だ。失礼する」

少年の指先はまだ熱を帯びていて、触れられたところから火が移るみたいだった。

それなのに、彼のボタンを外す手つきはさっきよりもずっと手際がいい。かなが状況を飲み込む前に、彼から借りた外套は床へ落ちていた。

白い光をまとった手が、順に彼女の傷へ落ちてくる。

かなはびくりと身を縮めた。

...

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