第93章

「ざああっ——」と、小沢かなは胸の内でつぶやいた。

 来た。

 ノアを辱めに来る連中が。

 自分は、彼と同じ側に立つ。退かない。

 ……ただ、惜しいのはこの料理だけだ。

 きちんと並べられていた食器の載ったトレーが、皿ごと、碗ごと、まるで天女が花を撒いたみたいに床へ散った。ぱりん、からん、と乾いた破裂音が食堂に跳ねる。

 瑪瑙のように艶めく深紅のドレスをまとったサリーナ公主が、わざとらしく手を引っ込めた。

「まあ、ごめんなさい。わざとじゃありませんの。でも……寛大で慈悲深いグラントさんなら、これくらいの無礼、気にしませんわよね? だって……異教徒と仲良く並んで座っていられるくら...

ログインして続きを読む