第22章 あの子

「……本当に、そんなこと言ったの?」

菅野詩音は病室のベッドに横たわったまま、両手でスープ椀を抱え、スプーンでゆっくりとかき混ぜていた。

ベッド脇の透析装置は沈黙したまま。彼女の血管へ戻るはずの血液は、すでにトイレへ捨てられ、水に混じって流されている。

小嶋健が枕元に立ち、淡々と告げた。

「はい。神谷社長は新しい腎臓の提供者を探すよう手配しています。早ければ今月中に、目処が立つかと」

次の瞬間――パァンッ、と乾いた音。

菅野詩音が椀を床へ叩きつけた。汁が派手に飛び散り、陶片が跳ねる。

薄い掛け布団を爪でえぐるように掴み、歯を食いしばる。

「ここまで来て、まだあのクズを庇うわけ...

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