第39章 崩壊

彼は彼女のほうへ歩み寄り、見下ろすようにして鼻で笑った。

「何だ? それが新しい趣味か。ちゃんとしたベッドがあるのに、わざわざ床で寝るなんて」

神谷彩夏は本当に眠っていた。だが神谷承吾の声を聞いた瞬間、はっと意識が浮上する。

ゆっくり顔を上げると、頬には乾いた涙の筋。目の縁は真っ赤なのに、表情だけが固く、感情の抜けた人形みたいだった。

「入らないのか」神谷承吾は彼女の横に来た。酒の匂いをまとったまま、屈んで肩に触れる。まるでこのまま抱きかかえて中へ運ぶつもりだと言わんばかりに。

神谷彩夏の身体がびくりと震え、目が見開かれる。

「やだ!」

ふいに何かを思い出したように、掠れた声で...

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