第68章 母のドレス

舞踏会を開くと聞いた瞬間、須藤彩夏の表情がわずかに強張った。

否応なく、前世の――あの舞踏会が脳裏に蘇る。

神谷理恵に目をかけられていたこともあり、その舞踏会は異様なほど盛大に催された。

もちろん、理恵が彩夏を気に入っていたからという理由だけではない。

理恵は、舞踏会の場で神谷承吾と須藤彩夏の婚約を発表するつもりだったのだ。

理恵は、彩夏と承吾の間に起きたあの一件を知っていた。だから承吾に責任を取らせようとした。

――けれど、その計画は前世では実現しなかった。

それらは、ずっと後になって彩夏が知ったことだ。

当時の彩夏が知っていたのは、舞踏会当日、菅野雅子が体調不良で欠席し、...

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