第73章 わざと難癖をつけることさえ言い出せない

神谷理恵が上の階から小走りに降りてきて、二人の間に割って入った。

両腕を後ろへ回し、神谷承吾の前に立ちはだかる。その姿は、まるでヒヨコを守る母鶏みたいだった。

「か、母さん……違う、俺はただ彩夏に二言三言――!」

ようやく我に返った承吾が、気まずそうに言い訳を始める。

「二言三言? あんた、私がさっきの暴言を聞いてないとでも思ってるの?」

耳で聞いたからこそ、理恵は信じられなかった。自分が育てた息子の口から、あんな言葉が出てくるなんて。

「母さん、あれは……咄嗟で。わざとじゃない」

「わざとじゃない?」

理恵は鼻で笑い、失望を隠しもしない目で息子を見た。

「わざと喧嘩売った...

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