第76章 枠数

須藤彩夏は、相手が見るからに取り乱しているのを一瞥し、鼻で笑った。まともに取り合う気など、最初からない。

けれど、その態度が菅野詩音の癇に障った。

詩音は大股で詰め寄り、彩夏の手を掴もうとする。

彩夏は反射的に身をひらりと躱した。

空を切った詩音の指先が、苛立ちに震える。

「須藤彩夏……逃げるの!?」

信じられない、とでも言いたげな目。まるで避けた彩夏のほうが大罪を犯したみたいな顔だ。

「どうしたの。もう猫かぶるのやめた?」

彩夏は冷たく笑って腕を組み、詩音を見下ろした。

詩音は一瞬きょとんとし――自分が今なにをしたのか、遅れて理解したらしい。悔しげに唇を噛むが、引っ込める...

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