第82章 彼の心の中にはあなただけ

神谷承吾は茫然自失のまま、須藤彩夏の部屋をあとにした。

自室に戻るとベッドに腰を下ろし、長いこと息が整わない。

どうして須藤彩夏が、突然あんなふうになってしまったのか――理解できなかった。

夢の中の場面が、また何度も脳裏をよぎる。

あまりにも、生々しく。

神谷承吾は俯き、両手を髪に差し入れた。

胸の奥に、言葉にできないものが渦巻く。

翌日。

朝食の席にも、須藤彩夏はいなかった。

やはり、避けている。

本気で。

食事すら一緒にしたくないのだ。

息子が魂の抜けたような顔をしているのを見て、神谷理恵は内心で「自業自得よ」と吐き捨てる。

かまっている暇もない。彼女はさっさと...

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