第33章

原崎野矢視点

俺は数歩下がり、スマホを掲げた。

ライトの光が、エレベーターの扉をふらりと横切る。

中は無音。さっきの物音が、ただの錯覚だったみたいに。

脳裏をよぎったのは、午後に療養施設の監視映像で見た影だ。

広瀬妃菜――帽子とマスクで顔は隠しても、あの体つきは誤魔化せない。

彼女は原崎家の親戚を名乗って、祖父に出どころの知れない錠剤を数粒渡していた。

だが医者の検査では、成分は確かに心臓に良い。配合の組み立て方も妙に緻密で、医者ですら「こんなの見たことがない」と唸った。

いい薬なら、どうしてこそこそする。薬はどこから手に入れた。

提携の件を片づけて車を出したら、気づけば広...

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