第39章

原崎野矢視点

夜は、底なしに深かった。

不意に、玄関のチャイムが鳴る。

髪を拭いていたタオルを放り出し、階段を下りて扉を開けた。

……やっぱり。

立っていたのは広瀬妃菜だった。

息を切らし、頬にはうっすら紅が差している。夜の闇に浮かぶ姿は、咲きたての薔薇みたいにやけに鮮やかだ。

薔薇は綺麗だ。けれど、棘がある。

広瀬妃菜という薔薇は、いつだって思いもしない形で――俺を深く刺す。

「何しに来た」

淡々と投げると、彼女は唇を噛み、声を震わせた。

「原崎野矢……どうして急に、取引先の場に出てこなくなったの? 私、何かした? ……私に怒ってるの?」

答えず、俺はドア枠にもたれ...

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