第43章

木下執事との通話を切った頃には、あのスポーツカーはもう、尾灯だけを残して遠ざかっていた。

交差点の先で完全に見えなくなるまで目で追って、胸の奥に重たいものが沈む。

……広瀬妃菜は、拗ねていただけじゃなかった。

あいつは本当に、佐藤雅人についていった。

さっきまで、あれだけ迷いなく俺のほうへ来たくせに。今度は振り返りもしないで、別の男の車に乗り込んだ。

「出せ」

歯の隙間から絞り出す。

「追え……!」

運転手が、恐る恐る言った。

「その、原崎様。先ほど執事の方が、一度お戻りになるようにと……追いかけますと、ご用件に差し支えませんでしょうか」

その一言で、頭に血が戻った。

...

ログインして続きを読む