第51章

広瀬妃菜視点

スマホは机の上に、音もなく横たわっていた。

画面は点いたまま。表示されているのは、十分前に原崎野矢と交わした、あの短い通話の履歴。

私は小さく息を吐く。胸の内が、ぐしゃぐしゃだった。

昨夜――薬が回って、私はこれまでになく大胆な決断をした。

今も脳裏には、夜の湿った光景が、何度も何度も再生される。

原崎野矢は私をじっと見据えていた。翳のある瞳の奥に、濃く沈む欲望。動きはすでに私を奪っているのに、視線だけはまるで噛み砕きでもするみたいに、獰猛で、侵略的で――。

思い出した瞬間、頬がかっと熱くなる。

だめ。これ以上、考えない!

私は慌ててスマホの画面を落とした。

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