第54章

田村成川の言い方はやけに私を気遣っていて、まるで私たちが一度も別れていないみたいだった。

「いい。迎えなんていらない、来ないで!」

きつく突っぱねたはずなのに、自分の声はふわりと柔らかい。

酔っているせいで怒っているというより、拗ねて甘えているみたいに聞こえて――余計に腹が立つ。

田村成川とこれ以上言い合う気にもなれず、私は電話を切った。会場の隅に腰を下ろし、目を閉じて頭を冷やす。少しでも醒めたかった。

……ところが、そう時間は経たないうちに、宴会場の入口に男の姿が現れた。

「妃菜!」

聞き慣れた声に目を開くと、田村成川が本当に来ていた。

心配そうに顔を歪め、まっすぐ私へ向か...

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