第58章

原崎野矢視点

車の脇にもたれ、広瀬妃菜がこちらへ歩いてくるのを眺めていた。

足取りは軽く、口元には隠しきれない笑み。まるで盗み食いに成功した子猫みたいだ。

機嫌は上々、か。

俺が眉を上げ、迎えに出ようとした、その瞬間だった。広瀬有香が頭のおかしい勢いで飛び出してきて、妃菜を指さしながら喚き散らす。

「野良の男と遊び歩いてる」だの「汚い」だの――聞くに堪えない戯言ばかり。

思わず眉間に皺が寄る。

……また何の発作だよ、この女。

俺は妃菜を見る。

当の本人はその場に立ったまま、有香の中傷に対して「は?」と言いたげな顔。呆れが先に立っている。

妃菜は最初からこうなると読んでいた...

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