第4章
ソフィアが臨月宮に来てからというもの、日々の暮らしは一層慌ただしくなったが、予期せぬ変化ももたらされた。
エルファリア王国の統治者である国王が、頻繁に臨月宮を訪れるようになったのだ。滞在はいつも束の間で、ソフィアをあやすだけだったが、私があの三人の子供たちの面倒をどう見ているのか、その鋭い眼差しで常に観察されているのを感じていた。
ある時、私がソフィアに現代の子守唄を歌って聞かせていると、不意に国王が戸口に現れた。
彼は静かに歌が最後まで終わるのを待ってから、尋ねてきた。
「何の歌だ?聞いたことがない」
「わ、私の故郷の童謡でございます、陛下」
私は慎重に答えた。
国王は何か思うところがあるように頷いたが、それ以上は何も問わなかった。
彼が私に対して興味を深めているのを感じた。
時を同じくして、エミリア貴妃は月妃である私に不満を抱き始め、三日に一度は私を自らの宮殿に呼びつけては、魔法教育の成果を確認すると口実にし、実のところは粗探しをして罰を与えようとした。彼女の元へ行くたびに、私は様々な「不敬」を指摘されたり、存在すらし得ない魔法の技を見せるよう要求されたりした。
「そなた、ソフィアに『異郷の歌』とやらを歌って聞かせているそうだな?」
エミリア貴妃は冷笑した。
「ソフィアに異民族の魔法の種を植え付けるつもりか?」
私は俯いたまま黙っていた。これがただの口実に過ぎないことは分かっていたからだ。
ソフィア王女の養育権を最も強く求めていたのは彼女であり、今、私にそれを「横取り」されたことにただ不満を募らせているだけなのだと、私はとうに王妃様から聞いて知っていた。
王妃様の病状が日に日に重くなる中、王宮の政務の処理を私に教えながら、かつてこう注意してくれたことがある。
「エイラ、気をつけなさい。エミリアは位こそ高くないけれど、禁術の扱いに長けているわ」
エミリア貴妃の居所を後にして、私はふと思い出した。王妃様が以前、凛氷花がどのような姿をしているのか知りたがっていたことを。彼女は病が重すぎて、誰もその極寒の物を彼女の元へ運び、見せようとはしなかった。
私は王宮中を探し回り、ついに人里離れた凛氷湖で一輪の凛氷花を見つけ出した。
凛氷湖へ向かう道にはほとんど人影がなく、空気中には奇妙な魔力の揺らぎが満ちており、気分が悪くなるほどだった。
「妃殿下、早く摘んで帰りましょう」
侍女が不安そうに言った。
私は頷き、足早に凛氷湖のほとりへと向かい、その一株の凛氷花を摘み取った。それは噂通り見事に咲き誇り、花弁は薄い氷の霜で覆われ、陽光を浴びて奇妙な光を放っていた。
まさにその時、微かなかすかな泣き声と魔力の揺らぎが私の注意を引いた。
「妃殿下、早くお戻りください。ここの魔力は歪んでいて、人の心に影響を与えると言われています」
侍女は怯えながら私の袖を引いた。
だが、その泣き声に込められた絶望と無力さに、私は背を向けることができなかった。
声のする方へ歩いていくと、ある片隅で、十歳ほどの少女を見つけた。
彼女の周りには微弱な魔力の光が漂い、腕の中には息も絶え絶えの白い小獣を抱いていた。
私はそれが、エミリア貴妃の娘であるエリザベス王女だと気づいた。
「エリザベス様?」
私はそっと呼びかけた。
エリザベスは顔を上げ、その顔は涙で濡れていた。
彼女の腕の中の小獣は弱々しく呻き、生命力が失われつつあるようだった。
「スノーが母上の機嫌を損ねたから、母上が魔法で傷つけて、魔核まで消そうとしたの……」
エリザベスは嗚咽交じりに説明した。
「私は魔法の才能がない出来損ないで、使い魔を持つ資格なんてないんだって。いつか私も、スノーみたいに妃殿下に凛氷湖に捨てられちゃうかもしれない……」
私はしゃがみ込み、そっと小獣の毛を撫でた。その体内から魔力が失われていくのを感じる。転生者である私には強大な魔法はないが、元の世界で得た基礎的な医療知識が役に立つかもしれない。
「私が助けてあげられるかもしれないわ」
私はエリザベスに言った。
「簡単な治癒魔法と、私の知っている方法で、ひとまず臨月宮で預かってあげる。あなた自身の宮殿を持てるようになったら、迎えに来ればいいわ」
エリザベスは驚いて私を見つめ、その瞳に一筋の希望がよぎったが、すぐにまた翳った。
「でも、母上はあなたにあんなに意地悪しているのに、私のこと、嫌いじゃないの?」
私は首を横に振り、優しく言った。
「それはあなたとは関係ないことよ。私から見れば、どんな子供も、その親が誰であろうと、優しくされる価値があるわ」
エリザベスの瞳に光が宿った。彼女は恐る恐るスノーを私の手に渡し、そして厳かに誓った。
「精霊に誓って、いつか私が月妃様のお力になれる時が来たら、エリザベスは必ずや全力を尽くします」
「ええ、その日を待っているわ」
私は彼女の頭を愛おしげに撫でた。その時、微弱ながらも確かな魔力の揺らぎを感じた。
「本当はあなたにも魔力があるのよ。まだ目覚めていないだけ」
エリザベスは驚きに目を見開いた。
だが私はもうスノーを抱き上げ、その場を後にしていた。
一刻も早く凛氷花を王妃様に見せなければならない。凛氷湖から離れると、すぐに萎れてしまうのだから。
