第7章

五月の末、王妃の病状が奇跡的に好転した。国王はこれを祝し、盛大な祝宴を催すことにした。

私が驚いたのは、その準備が、長らく冷遇されていたヴィクトリア貴妃に任されたことだった。後宮の差配役である私ではなく。

私は不安を覚えた。

先の、見栄っ張りなエミリア貴妃の一件以来、ヴィクトリア貴妃は表面上は恭順を装っていたが、その瞳の奥には、時折見過ごせぬほどの冷たい光がよぎるようになっていた。

「エイラ、余計なことは考えなくていい」

王妃は私をなだめるように言った。その声は以前よりも力強い。

「私があなたを守る」

私はしばし黙り込み、そして王妃の手を握り返した。

「王妃様、ご...

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