第4章

「離婚か? ついに決心がついたのか?」

高橋誠一は車のドアに寄りかかり、探るような視線を私に向けていた。

彼は今日、わざわざ私を送ってきてくれたのだ。

東京の夜の帳が街全体を覆い尽くしている。私達は夜闇の中、車の前で立ち尽くし、私の結婚生活について口を開いた。

「ええ、この茶番はもう終わりにするわ」

私は顔を上げ、穏やかな笑みを浮かべてみせた。

「君は変わったな、千紗」

高橋誠一はわずかに眉をひそめる。

「雰囲気がまるで違う。まるで別人のようだ」

私は彼の疑問に正面から答えず、ただ淡々と告げた。

「死に直面すると、色々なことが見えてくるものです。骨癌を患って、...

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