第8章

夕暮れ時、不意に玄関のチャイムが鳴り響いた。その時、私と高橋誠一はマンションで新しく買った家具を組み立て、間近に迫った同棲生活の準備をしているところだった。

「僕が出るよ」

高橋誠一は手にしていた工具を置き、玄関へと向かった。

私は彼の後ろについていきながら、胸騒ぎにも似た不安な予感を覚えていた。

ドアが開いた瞬間、私たちは二人とも固まった。

天野次がドアの外に立っていた。記憶の中にある、常に非の打ち所がないエリート然とした姿とはまるで別人だった。彼のスーツには皺が寄り、ネクタイは緩く首からぶら下がっている。目の下には明らかな疲労の跡があり、髭も綺麗に剃られてはいなかった...

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