第115章

結城記念病院の最上階、VIPルーム。

昨夜の喧騒など、最初からなかったかのように。

部屋は広く、照明は柔らかく、窓の外には東京湾の晴れた景色が広がっていた。白鳥遥は車椅子に座り、ドレッサーの鏡に向かってメイクを直していた。首の横には医療用の絆創膏が貼られ、首筋の痣はコンシーラーで半分ほど隠されているが、それでも目を引く。手は安定していた。パフを動かす弧が正確で、何百回と繰り返してきた習慣的な動作のように見えた。

その痣など、気にもしていない。

むしろ、少し気に入っていた。

昨夜、結城司があのドアを蹴破った瞬間——脳裏で何度も再生する。あの瞬間の彼の目。あの瞬間、彼が選んだ方向。星野凛...

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