第103話まだ許さないで

六月

わたしはグランデ氏のオフィスの隅に立ち、ヴァネッサが出張の件を矢継ぎ早に報告するのを、一言も漏らすまいと聞いているふりをしていた。けれど本当のところ、意識は彼女にはまったく向いていない。わたしの頭の中にいるのは、彼――。

彼は……そう、驚くほど、元気そうだった。

肌は変わらぬオリーブ色の艶を湛え、姿勢は相変わらず読み取れない。

胸の奥で、ほっとしたものがほどける。だがその直後、すぐに失望が尾を引いた。病気なのではないか、それどころかもっと悪いことになっているのではないか――そうやってわたしは勝手に自分を追い込み、心配でぼろぼろになっていたのに。彼は、何事もなかったかのように平然と...

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