第114章入浴してくれませんか?

   ~ヘルメス~

 水の中では、あらゆるものが遠のく。外の世界の音も、頭の中のざわめきも、胸の奥に居座る痛みさえも。水面の下は静かで、穏やかだ。ほんのひととき、俺はその静けさに身を預ける。

 だが、やがて肺が焼けるように痛み出し、俺は上へと身を押し上げた。鋭く息を吸い込みながら水面を破る。空気は重く、湿っていて、まぶたをしばたかせるたび、肌にまとわりつくようだった。

 プールの縁に両腕を預け、家のラウンジ側へと視線を向ける。グランデ家の屋敷――あいつの家族の家が、その向こうに黒々と静まり返ってそびえている。オーストラリアから戻ってきて以来、ここに足を踏み入れたことは一度もなかった。数週...

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